2026-07-14

専任宅建士の要件と「専任性」の注意点

「専任の宅建士って、要は宅建士証を持っている人を1人置けばいいんですよね?」——ご相談を受けるたびに、こうした前提からスタートすることがよくあります。実はここが実務で押さえる点で、認識のずれがあるとせっかく整えた申請書一式が受理されずに差し戻される可能性があるので、注意が必要です。

宅建業免許では、事務所ごとに「業務に従事する者5名につき1名以上」の割合で、専任の宅地建物取引士を置く必要があります。この「専任」という言葉の解釈で判断に迷うケースが多いため、本記事では実務での考え方と、申請前後で気をつけたいポイントを整理します。数値や運用の細かな部分は自治体により異なりますので、目安として読んでいただき、最終判断はできるだけ窓口・専門家にご確認いただくことをおすすめします。

専任性の2つの柱

「専任」という言葉は一つの意味に見えて、実務上は大きく2つの要件に分解して考えるのが一般的です。どちらか一方が欠けても「専任」とは認められにくく、審査で指摘を受ける典型パターンになっています。

要件意味NGになりやすい例
常勤性その事務所に常時勤務していること週2日程度の出社/遠方に居住していて通勤が現実的でない
専従性宅建業の業務に専ら従事すること他社の代表取締役を兼務/他のフルタイム勤務と掛け持ち

常勤性が問題になりやすい場面

常勤性は「その事務所に実際に机があり、日常的に業務をしているか」という実態面が見られる要件です。書類上は専任宅建士として届け出ていても、実際にはほとんど出社していない、あるいは自宅と事務所が大きく離れていて日常的な通勤が難しい、といったケースでは、常勤性そのものを疑われることがあります。テレワークが一般化した現在でも、宅建業の専任宅建士については「事務所に常時勤務」という前提が基本的な考え方になっている点は押さえておきたいところです。

専従性が問題になりやすい場面

専従性は「他の仕事と兼務していないか」という視点です。副業として別会社の非常勤的な立場に就いている程度であれば個別判断の余地がありますが、他社のフルタイム従業員である、あるいは他社の代表取締役として日常的に経営判断を行っている、といった状態は、専従性を欠くと判断される可能性が高い典型例です。

実務でよくあるつまずき

ここからは、実際にご相談の中で「思っていたより厳しく見られた」「想定外の書類対応が必要になった」という声が多いパターンを、少し具体的にご紹介します。

他社勤務との兼業

他社の正社員(フルタイム)との掛け持ちは、原則として認められにくいと考えておいたほうがよいでしょう。実務でありがちな失敗は、転職先の宅建業者で専任宅建士として名前を出す段取りを進めながら、前職の退職手続きが後回しになっているケースです。前職に在籍したまま申請すると、勤務実態の確認で審査が止まってしまうことがあります。退職日を明確にしたうえで、退職証明や雇用保険の資格喪失に関する書類など、退職の事実を裏付けられる状態にしてから申請を進めるのが安全です。

他法人の役員兼務

他法人の非常勤役員であれば認められる余地がある一方、代表取締役としての兼務は、常勤性・専従性の両面から見て難しいと判断されるのが原則的な考え方です。「名義上の代表で実務はしていない」といった説明だけでは足りず、実態としてどちらの会社にどれだけの時間・責任で関わっているかを問われることが多いため、事前に整理しておく必要があります。

行政書士・税理士など士業との兼業

同一の場所で宅建業と士業を兼業しているケースは、業務量や執務実態によって個別判断になる部分が大きい分野です。士業側の業務が繁忙期に偏っている、あるいは補助者に業務を任せられる体制がある、といった実情次第で結論が変わることもあるため、書類を作り込む前の段階で一度相談しておくことをおすすめします。

出向・派遣・在宅勤務の扱い

近年増えているご相談が、グループ会社からの出向者を専任宅建士に充てたいというケースや、在宅勤務が中心のスタッフを専任宅建士にできないかというケースです。出向の場合は出向元・出向先の指揮命令関係や雇用契約の内容が確認されることが一般的で、単に「出向させれば常勤扱いになる」という単純な話ではありません。在宅勤務についても、事務所への出社実態がほとんどない場合は常勤性の説明が難しくなる傾向があるため、どちらも早めに窓口へ相談したうえで進め方を決めるのが無難です。

申請前に確認しておくこと

専任宅建士まわりの書類は、後から差し替えが発生すると審査全体のスケジュールに影響しやすい部分です。申請書を作り込む前に、次の点を一つずつ潰しておくと手戻りを減らせます。

これらは一つひとつは小さな確認事項に見えますが、審査担当者が最初に目を通す部分でもあります。ここでの不備は「専任宅建士の実態を疑われる」という、免許取得の可否に直結しかねない指摘につながりやすいため、丁寧に確認しておく価値があります。

専任宅建士が途中で交代・退職した場合の実務

免許取得後によくいただくご相談が、専任宅建士の退職や交代に関するものです。専任宅建士に変更が生じた場合は、変更届の提出が必要になります。届出の期限は自治体・状況によって異なる場合がありますので、目安として早めの動きを意識していただくのが安全です。

実務上とくに注意したいのは、「退職が先に決まってしまい、後任の専任宅建士候補がまだ決まっていない」という状態です。専任宅建士が不在の期間が生じると、事務所として宅建業を継続するための要件を欠いてしまう可能性があり、最悪の場合は業務停止に近い状態を招きかねません。退職の申し出を受けた段階で、後任候補の目処が立つまでは退職日を調整してもらう、あるいは他事務所から一時的に応援できる宅建士がいないか検討する、といった対応を並行して進めることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q. 専任宅建士は正社員でなければいけませんか?

正社員であることそのものが唯一の条件というわけではなく、常勤性・専従性を満たしているかどうかが前提になります。契約社員であっても、勤務実態が常勤に近く、他の仕事と掛け持ちしていない状態であれば認められる余地はあります。雇用形態の名称よりも、実際の勤務実態がどう見られるかがポイントです。

Q. 個人事業主として宅建業を営む場合、自分自身が専任宅建士になれますか?

事業主本人が宅建士資格を持ち、常勤性・専従性の要件を満たしていれば、自分自身が専任宅建士を兼ねることは一般的に想定されている形です。ただし、他に本業を持ちながら副業的に宅建業を営む場合は、専従性の説明が難しくなることがあります。

Q. 専任宅建士の人数は事務所の規模でどう変わりますか?

目安として「業務に従事する者5名につき1名以上」という考え方が基本になりますが、従事者の数え方や端数の扱いは自治体により異なる場合があります。事務所の人員体制を確定させる前に、管轄窓口で最新の運用を確認しておくと安心です。

専任宅建士の「専任性」は、常勤性・専従性という2つの観点から実態ベースで判断されるため、書類の整え方だけでなく、雇用契約や勤務実態そのものを見直しておくことが大切です。判断に迷うケースや、専任宅建士の交代スケジュールに不安がある場合は、早めのご相談をおすすめします。個別の状況をふまえたご相談はお問い合わせフォームで受け付けています。